■ 舌
 1)定義: 脊椎動物の口腔底部にある筋肉からなる器官
 2)機能
  1. 食物の嚥下を司る
  2. 陸生高等動物: 発声を司る
  3. 魚類: 内部に筋組織がなく運動性を欠き、触覚や味覚を司る
  4. 蛇類: 運動性が発達し、外界の食餌を探す嗅覚作用をもつ
 3)発生
  1. 脊椎動物では鰓下筋群の吻側が舌筋に変化
  2. 高等動物の舌骨下筋群はこの尾側部に由来
 4)生理
  1. すべて舌下神経支配を受ける横紋筋
  2. 口腔内の食塊の移動に重要な働きを果たす
  3. 高等哺乳動物・特にヒトでは、発声機能への関与が大きい。

■ 咽頭
 1)定義
  1. ヒトでは鼻腔背側部から食道との間の膨大部を指す
  2. 動物により範囲が異なる
 2)区域
  1. 上咽頭: 鼻咽頭
  2. 中咽頭: 口咽頭
  3. 下咽頭
 3)発生
  1. 内胚葉から腸管を形成し、その頭部前腸の前端近くの広い部位から
    分化形成される
  2. ヒト胎生22日、咽頭両側面に鰓弓が形成される

■ 鰓弓
 1) 機能
  1. 水生動物においては呼吸を司る濾過装置
  2. 進化の過程で呼吸器へ形態変化
  3. 呼吸器系は消化器系の咽頭部位に発生の原基を持ち、咽頭において共通路
    を有する
 2) 鰓弓    として鰓がある  3. この部分は弓状の軟骨からできており、鰓弓と呼ばれる
  4. 区域
   a)第1対:   顎骨弓
   b)第2対:   舌骨弓
   c)第3対以下: 鰓弓
  5. 神経支配
   a)鰓弓神経: 鰓弓を非配する脳神経
   b)三叉神経、顔面神経、舌咽神経、迷走神経、副神経
   c)脊椎動物は進化の過程で、顎の形成・鰓の消失・鰓弓筋の退化がある      変化する   f)鰓弓筋が横紋筋であるが、腸管の平滑筋と期限が共通するために生じる

■ 疑核         支配する運動系の核 3) 発生
  1. 胎生期:神経管の基板から発生する特殊臓性遠心性神経核
  2. 発生が進むにつれて腹側へ移動 4) 構造
  1. 髄内根は脳幹の髄内で大きく湾曲する
  2. この位置と走行は、骨格筋を支配する体性遠心性脳神経核群とは大きく
    異なるもので鰓弓神経に特徴的
 5) 運動ニューロン起始核
  1. 舌咽神経: 最吻側
  2. 迷走神経: 中央部、副神経の一部

■ 孤束核
 1) 定義: 延髄の求心性神経核
 2) 機能: 嚥下時の筋収縮に必要な機能を有する
 3) 構造
  1. 咽頭・喉頭粘膜に分布する感覚線維は孤束核の尾側部に投射する
  2. 脳幹の中継核
  3. 味覚を伝える求心線維は延髄背側に収束して孤束となり、孤束核吻側部に終わる
  4. 上行性投射線維は視床後内側腹側核(VPM核)に至る
  5. 味覚の皮質への投射は内包後脚から島皮質・側頭弁蓋に達する
  6. 触覚・痛覚は大脳の中心後回と頭弁蓋へ入力される
  7. 疑核とその周囲の毛様体へ投射する

■ 舌咽神経
 1) 定義: 第Ⅸ神経で脊髄神経後根に対応する混合神経
 2) 構成
  1. 一般体性感覚性: 外耳の皮膚
  2. 特殊体性感覚性: 味覚・舌後部1/3の味蕾
  3. 一般臓性感覚性: 咽頭と中耳の粘膜、頸動脈小体、顎動脈洞
  4. 一般臓性運動性: 副交感神経性、耳下腺
  5. 特殊臓性運動性: 茎突咽頭筋
 3) 経路 4) 障害  2. 迷走神経や副神経とともに障害されると嚥下障害を発症しやすい

■ 舌下神経
 1) 解剖
  1. 頚髄の運動枝 2) 機能
  1. 頸神経叢と合流して鰓下筋群を支配する
 3) 発生
  1. 鰓下筋群吻側: 舌筋群(舌骨舌筋、おとがい舌筋)となる
  2. 鰓下筋群尾側部が舌骨下筋群(甲状舌骨筋)となる    独立した体性遠心性神経となる
  4. 横紋筋の随意筋を支配する
  5. C0の脊髄神経運動根が特化したもの

■ 口蓋垂 2) 運動: 嚥下時に口蓋垂筋が収縮し、口蓋垂を咽頭後壁に接着させる
 3) 機能: 口腔内容物が上咽頭に誤って流入するのを防止する

■ 口峡
 1) 定義: 口腔と咽頭の境界部
 2) 構成
  1. 上壁: 口蓋垂・口蓋帆
  2. 側壁: 口蓋舌弓(口蓋舌筋)・口蓋咽頭弓(口蓋咽頭筋)
  3. 下壁: 舌根
 3) 生理
  1. ほとんどの咽頭筋、口峡・軟口蓋の筋群は平滑筋
  2. 発生学的には臓性筋
  3. 舌咽神経と迷走神経の支配を受ける
 4) 運動
  1. 収縮すると口峡が狭くなる
 5) 障害
  1. 一側性末梢性舌咽・迷走神経麻痺
   a)軟口蓋筋は健側が収縮、口蓋垂は健側に偏倚
   b)カーテン徴候: 発声の際に咽頭後壁健側に偏倚
■ 発生
 1) 従属栄養    取り入れた有機物に依存している
  2. このような栄養形式を従属栄養という
  3. 原生動物protista
   a)単細胞性の真核生物
   b)すでに体外から栄養源を摂取する構造物が形成されている     ようになった
  5. 構造
   a)原始的動物: 単調な管状構造
   b)脊椎動物: 機能も構造も著しく多様となる
   c)進化に伴い長さと表面積を増大し、屈曲した消化管となる
  6. 呼吸器原基
   a)ヒト胎児4~5週に消化管吻側の咽頭の腹壁面が腹側に膨出し、嚢状の気管支芽が
    形成される(呼吸器憩室、肺芽)
   b)肺芽の基部が二股に分岐し無対の気管となる
   c)先端部は分岐を繰り返して肺胞まで分化する
   d)胎生36週以降になると肺胞が成熟し、出生時までに肺が完成する

■ 消化機能
 1) 分類
  1. 食物摂取・咀嚼・嚥下・貯留
   a)消化系の初段階
   b)随意運動と感覚が重要
   c)感覚系
    ● 遠隔受容性感覚: 視覚・嗅覚など、摂餌に関与
    ● 外受容性感覚 : 表座位感覚
    ● 臓性感覚    : 味覚
  2. 科学的消化
   a)消化系の中部の段階
   b)反射的・自律的な調節を受ける
   c)消化運動と消化液分泌が重要な役割を果たす  3. 消化管からの栄養吸収と排泄
   a)消化系の後部の段階
   b)内臓感覚、自律・随意運動が総合的に作用する
 2)すべての段階が有機的・総合的に機能しないと消化不全をきたす

■ 嚥下中枢
 1) パターン形成器(CPG)
  1. パターン運動形成の中心
  2. 延髄の孤束核や疑核周囲に存在する神経細胞集団  4. CPG活動の惹起
   a)食塊や唾液による咽頭・喉頭などへの機械感覚
   b)味覚や水分子による化学刺激
   c)随意性嚥下に関わる上位脳からの入力
   d)興奮が閾値を超えると嚥下運動が一気に発動される
  5. 構造的分類
   a)DSG
    ● 孤束核に存在
    ● 起動神経群と呼ばれる
    ● 嚥下開始と連続嚥下などにおけるリズム形成に関わる
   b)VSG
    ● 疑核・その周囲の網様体に存在
    ● 切替神経群と呼ばれる
    ● 各運動ニューロンへの指令を送っている
 2) 嚥下運動は、咽頭粘膜からの知的入力により反射性に誘発された咽喉頭筋群の
    パターン運動で形成されている
 3) 皮質延髄路が運動野や咀嚼野等の運動に特化した領域からCPGに至る中軸
■ 前部帯状皮質
 1) 一部は情動に関与 3) 後部帯状皮質は感覚統合や記憶との関連が深く、食物認識機構への関与が示唆

■ 島皮質
 1) 延髄孤束核と双方向に連結される
 2) 前島回
  1. 機能的に咀嚼・嚥下・嗅覚・味覚に特化されている。
  2. 辺縁系機能とも密接に関連し、運動前野や視床とも連絡し嚥下を調節している

■ 大脳基底核   に関与

■ 嚥下時の感覚入力 2) 食塊や唾液による末梢刺激によって反射性の嚥下反射が惹起される
 3) 嚥下反射惹起のために受容される刺激
  1. 咽喉頭内の環境
  2. 咽頭内への食塊のながれ込みの位置と量
  3. 咽頭への科学的刺激など
 4) 上記刺激を咽頭および喉頭粘膜の知覚受容器で認識する
 5) 咽喉頭粘膜を支配する知覚神経
  1. 上喉頭神経・舌咽神経知覚枝
  2. 上皮内            
   a)自由神経終末および味蕾構造として存在
   b)粘膜表面近くの細胞間まで侵入  3. 基底層直下の上皮組織内
   a)数珠上の神経終末が神経ネットを形成
   b)神経終末は喉頭蓋基部や披裂部に高い密度で認められる
   c)咽頭後壁や声帯粘膜では疎となっている
  4. 下咽頭 
   a)水受容器が存在
   b)唾液に含まれる水による感覚入力が嚥下運動誘発に重要とされる 

■ 舌骨運動
 1) 嚥下時に喉頭を前上方に挙上することによって誤嚥を防ぐ機構
 2) 喉頭の運動は舌骨を介して舌骨上筋群、舌骨下筋群の運動によって行われる
 3) 嚥下時舌骨運動
  1. 上方運動   b)主に茎突舌骨筋等背側の舌骨上筋群の筋長に変化がみられる
  2. 前方運動
   a)食道入口部開大を補佐する  3. 障害されると食塊の喉頭侵入や誤嚥の危険性を増大させる
 4) 重症心身障害者
  1. 遅延パターン
   a)挙上相後退群
    - 嚥下時舌骨運動の挙上相に相当する時期に健常群よりも舌骨が後方に牽引される    - オトガイ舌骨筋等腹側舌骨上筋群の筋長が過度に伸ばされたため筋出力が低下    - 舌骨上筋群の腹側と背側の筋出力に不均衡がある
   b)前進相停滞群
    - 前進相での舌骨移動が不足
    - 舌骨運動が全体的に不足
    - 筋緊張低下のために舌骨上筋群の筋出力が不足している